category-area

広電のLRT化に向けて 制度の壁 【全長30m以下】

2014年05月16日 22:00

昨日更新した記事の続きです。
広電のLRT化に向けて 制度の壁 【最高速度40km/h】

現在、国内を走る路面電車は軌道法に基づいた軌道運転規則によって、運転速度は40km/h以下、一つの編成長が30m以内という制限を受けています。
しかし同規則の中で、"特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けられればこの規則によらない"
ことも示しています。

昨日、電停の統廃合や優先信号制御の拡大の上、グリーンムーバークラスの車両に限り速度制限は緩和されていくべきと書きました。
今日は編成長について。
連結した車両の全長を30m以下としている規則の根拠として、昨日記事の中で紹介した答弁書の中で政府はこのように説明しています。
○連結車両の長さの制限は、併用軌道が道路上に敷設され、他の道路交通に影響を及ぼすことから、交差点等において他の道路交通の進路に支障を来す時間が著しく長くなること等がないよう定められたものである。
○路面電車が他の道路交通に影響を及ぼすことを考慮すれば、道路交通の円滑化を図ること等のために適切なものであると認識している。


正直これはごもっともだと思います(^_^;)
市内線の電停の中には現行の30m級5連接LRVである5000形、5100形が既に容量ギリギリとなっている電停があり、
これ以上伸ばすと横断歩道や交差点に車両の後部が干渉してしまいます。

それでも広島電鉄の輸送力不足は大きな課題です。
先日取り上げた市のLRT計画案によるとラッシュ時では宮島線で150%、市内線で120~130%の混雑率だそうです。(1.現状及び課題、2・整備の目的及び基 本的方向
個人的には特に宮島線でいつも混雑しているように感じます。休日はほぼ座れないですし、降り口が前後2ヶ所しかないのでそこまで移動するのも大変です。

一つの解決策として海外のトラムのように連結運転をするという方法があります。
パリの例です。


5連接の車両を2編成連結しています。60m以上ありますね。
宮島線内は鉄道事業ですので30mという全長の制限はありません。
宮島口~広電西広島まで連結運転を行い西広島駅で解結後、片方は2号線広島駅行き片方は3号線広島港行きという形になれば、
混雑は解消できて運用の幅は広がって本当に理想的です。
ヒロさんのblogでもこれが提案されていました。)
的場町交差点の改良により、広島港まで行かず皆実町6丁目から比治山線に入り再び本線から宮島口を目指す、という路線もあり?

ただ、連結運転を行う場合は前方の車両で後方の車両も制御するため、車両同士を電気的に繋げなければなりません。
現在の車両にはそのような電気連結器は搭載されておらず(非常時に物理的に連結するだけ)、既存車両は連結部の改造が必要となります。


連結運転が理想的に見えますが…(笑)
異なる解決策としてあえて私は7連接車両の導入を提案してみます。
三菱重工など3社で共同開発されたグリーンムーバーマックスは国産初の100%超低床車両です。
将来の国内外への普及を目指し車両はモジュール化されています。
だからこそ5連接をそのまま3連接に縮めた1000形グリーンムーバーレックスが導入できました。

201302hiroden1000-9.jpg
(2013年2月撮影)

このプラットフォームを使えば比較的安価に7連接車両は製造できると思います。
全長は42m程になるはずですが、(5100形:30.0m、1000形:18.6m)
大臣の認可を申請する上で最大の課題は最初に書いた通り電停の長さです。
グーグルマップで簡単に調べてみると、中心部の本線上では銀山町、立町、本川町、西観音町、福島町の電停が長さ30m以下です。
(胡町・八丁堀は統合すると想定、小網町~観音町は平和大通りへ移設すると想定し省きました。)
幸い、これらはいずれも両側が横断歩道に挟まれているということはなく、延長の余地は残されているように見えます。
私はやはり都市部の東西の軸は現在のネットワークを活かした広電が担うべきだと思っています。
将来的に旧態依然の路面電車からLRTに昇華して、一定数自動車やバス路線からLRTへの転換を図るつもりであれば
ラッシュ時以外でも5連接(定員150人)では足らなくなる時が来るのではないでしょうか。
南北の軸はアストラムの本通から先の延伸が理想ですが、現実的に難しい。
だとすればなおさら広電のLRT化の重要性が増します。
ハードルはこちらの方が高いですが、あえて提起してみました。


例え話が大きく飛躍します。
これは先ほどの連結運転案にも当てはめられますが、同じ広島駅行きでも従来の土橋や十日市から本線(相生通り)を経由する電車と、
平和大通りから白神社交差点まで直進する新設ルートから鯉城通り・相生通りを通って広島駅へ向かう電車があれば
軌道上の相対的な車両数が減りダンゴ運転の解消にも貢献できますよね。



ここまで書いてみましたが、いずれの案にせよこれらが運用できるための環境整備が絶対条件です。
電停の統廃合や優先信号拡充、信用乗車制度(運賃制度)、車両更新、何より利用者・沿線住民の理解などなど…。
特に編成長を伸ばせばそれに合わせてドアの数も増えるので、現在の運賃収受制度に代わる全く新しい制度の導入が求められる事になりますね。

昨日取り上げた速度制限緩和と今日の編成長制限緩和は、一連のLRT化施策の中では最後の最後。
まずは先ほど挙げたような所から地道に改善していく必要がありますね。

同時に法律の方も新時代の路面電車に適した物に変えていくことを願います。
国内の地下鉄新規建設はもう終わったとも言われています。
一方、建設費が安価で環境負荷も少ない、バリアフリーなLRTは多くの都市で検討されるようになりました。
2020年東京オリンピック・パラリンピックも決まったことですし、今後の柔軟な検討を期待したいです。



「広島ブログ」に参加しました!
クリックにて応援をよろしくお願いします(^_^)
広島ブログ

関連記事

広電のLRT化に向けて 制度の壁 【最高速度40km/h】

2014年05月15日 22:27

今回も路面電車の高度化に係る制度の問題についてまとめてみたいと思います。

過去の記事はこちらです。
広電のLRT化に向けて 胡町・八丁堀電停統合の提案
広電のLRT化に向けて 『急ぐ時はバス』?
広電のLRT化に向けて サイド/センターリザベーションの提案
広電のLRT化に向けて 制度の壁 【信用乗車方式】


前回は割増運賃(罰金)について定めた鉄道(軌道)運輸規程を取り上げましたが、
今回は軌道法に基づいた軌道運転規則に関して。
国内においてはこの規則により、併用軌道では運転速度は40km/h以下一つの編成長が30m以内という制限を受けています。
第四六条、第五三条
特に広島のような大きな都市で基幹交通を担うには、これらの規則で能力不足を引き起こしていると言わざるを得ません。

しかしながらこの軌道運転規則の第二条にはこのような記載もあります。

第二条  道路の路面に敷設する併用軌道の運転は、この規則の定めるところによつてしなければならない。ただし、特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けて、この規則の定めるところによらないことができる。この場合において許可を受けた事項を変更しようとするときは、国土交通大臣の許可を受けなければならない。


"特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けてこの規則に定められた以上のことも可能である"
と同じ規則に書いてあるんですね。
京都と大津を結ぶ京阪京津線には固定編成の60m級の車両が一部区間で道路上を走っていますし、
広島でも5000形グリーンムーバーは海外製ゆえ約30.5mの全長を持っています。

この規則は戦後間もない昭和29年、日本中に路面電車が走っていた頃にできたものです。
実際、広電にもその頃から走っているであろう車両はまだ数多く現役で走っているのですが、
グリーンムーバーシリーズのLRVは同じ「路面電車」とは呼べないほどの進化を遂げています。


速度制限について考えます。
そもそも時速40kmという速度制限は
○路面電車の制動距離が他の道路交通に比べて著しく長いこと
○目視で車両間の距離を確保する方式であること

これらの理由によって道路上の安全を確保するために設けられている制限である、というのが政府の見解だそうです。
平成11年、参議院にてLRTの普及に関する質問主意書が提出され、それに対する政府の答弁書が公開されています。
【参議院ホームページ】
質問第二八号
答弁書第二八号

グリーンムーバー以降の車両は加速性能はもちろん、減速性能も大きく向上しています。
通常のブレーキに加えて、パッドを直接レールに押し付ける「レールブレーキ」なるものが装備されていると聞きました。
現状のグリーンムーバーも含め国内を走るLRVが「他の道路交通に比べて制動距離が著しく長い」ということはないと思いますね。
ただ、実際にそれを使うかどうかは車内の乗客の安全性を考えると別の問題です。(バスも同じことが言えます。)

前方数百メートル(これは検討が必要)に車両がいない場合に
グリーンムーバークラス(5000形・5100形・1000形)に限り、市内線最高速度を50km/h程度に緩和しても全く問題はないと思います。
少し先の目標として提案したいです。

しかし、では今の状態のままムーバーの制限だけを50キロに緩和したところで大きな効果は得られないでしょう。
交差点では相変わらず右折車が軌道近くで待機していますし、電停の間隔も短いです。
車両数も増えてきたとはいえ、全体的に見てLRVの数はまだ足らないですしね。
緩和の申請をするには、優先信号の拡大と電停の統廃合、さらなるLRVの導入を済ませてからでないと難しい現実もありますね。

ちなみに軌道運転規則の第三条には、
新設軌道の運転に対しては鉄道運転規則を準用する、とあるので
最高速度40km/hという制限を受けることはないそうです。
つまり、新設する駅前大橋線では制度の上では40km/h以上の運転も可能である、と解釈しても良いのでしょうか。
将来を考えてもせっかくの新線ですから、センターリザベーション化しなるべく他の交通の影響を受けない形で整備していただきたいですね。


このまま編成長についても書きたいところですが、長くなりそうなので一度ここで切りたいと思います。
今回はこちらのサイトを大いに参考にさせていただきました。
【 まちをこわす「クルマ『中心』社会」、まちをつくる「LRT」 】: 「古い手縄」からの「縄抜け」は、できるっ!
軌道法やその他規則に関して気付かされることが多かったです。


>>続き
広電のLRT化に向けて 制度の壁 【全長30m以下】




「広島ブログ」に参加しました!
クリックにて応援をよろしくお願いします(^_^)
広島ブログ

関連記事

広島市、今後のLRT整備計画と意見募集のお知らせ

2014年05月12日 22:32

路面電車の駅前大橋線新設に関して広島電鉄は、先月地元住民が提案していた「的場町」・「段原一丁目」を残す形での環状ルート案を積極的に受け止めていることが明らかになりました。
椋田社長は稲荷町交差点の安全性などがネックになるとしながらも、技術的にはクリアできる可能性はあると話しました。

【RCC】:「循環ルート案」に広島電鉄椋田社長が積極姿勢(以下転載)

 広島市が検討している路面電車の「循環ルート」についてです。広島電鉄の椋田昌夫社長は「広島市の要望に応えられるよう努力したい」と、実現に向けて積極的な姿勢を示しました。

 これまでにもお伝えした循環ルートをおさらいしてみましょう。

 現在の路面電車のルートは東側を迂回しながら広島駅に進入しています。

 当初広島市は、真っ直ぐ駅に乗り入れる「駅前大橋線」をつくり、現行のこのルートと3つの電停を廃止する案を検討していました。

 その後、住民の反発を受け浮上してきたのが、このうち的場町など2つの電停を残して紙屋町を回るのが「循環ルート案」です。

 広島市が検討している「循環ルート」について、広島電鉄の椋田(むくだ)社長は技術的な問題をクリアして実現できるよう、努力する姿勢を示しました。

 (椋田社長)「できる限り可能な方法を模索していきたいと考えています。(技術面は)運輸局や県警のご指導ご理解いただきながら(広島市の)要望に応えられるべく努力していきたいと思っています」

 「循環ルート」の案は、広島市の「駅前大橋線」の検討に伴う3つの電停の廃止計画を受け、これに反対する地元住民自らが提案したものでした。

 「駅前大橋線」の整備と同時に、的場町を左折して紙屋町へ向かう形にすれば電停の廃止も1か所で済み、乗り換えなしで市内を回る広島電鉄初の「環状線」となります。

 広島市は現在、技術的に可能かどうか広島電鉄と協議を進めています。

 椋田社長は、道路の勾配や、駅前大橋線との交差地点での安全性がネックになるという認識を示したものの、道路や路面電車の軌道の形状を変えるなど、さまざまな方法を検討することで「技術的にクリアできる可能性はある」と話しました。

 また採算性についても明るい見通しを示しました。

 (椋田社長)「電車のその部分だけ運行その部分だけで採算を見るというよりは、全体的な枠組みの中で考えれば十分採算が取れるという気でおります」

 広島市は、12日夜からこの「循環ルート」について地元住民を対象にした説明会を開催する予定で、「できるだけ早い時期に駅前大橋線と循環ルートの是非について結論を出したい」としています。

(ここまで)

広島市の方は本日、環状ルートについての地元説明会を開いたようです。
明日また新たな情報などが分かればお知らせしたいと思います。
市の担当者も「できるだけ早い時期に…」とおっしゃっていますから、その言葉通りの結果を期待したいですね。



さて、その広島市は『平成26年度広島都市圏LRTプロジェクト生活交通改善事業計画(案)』なるものをまとめ、公開しました。
早速紹介します。
【広島市】:平成26年度広島都市圏LRTプロジェクト生活交通改善事業計画(案)(利用環境改善促進等事業)に対する意見募集について

コメントでも教えていただいておりました。ありがとうございます。
計画案は国土交通省中国地方整備局や広島県、市、県警、そして広島電鉄などで構成される、「広島都市圏LRTプロジェクト推進協議会」がまとめたものです。
何年も前から検討継続している組織です。
上のページの下段にある緑字のリンクをクリックして参考資料を読むことができます。
この中から特に注目したい部分を紹介してみます。

まずは短期の具体的な決定事項から。
電停施設改良について。
近年で言えば2012年度に本通電停が、2013年度に土橋電停が大幅に改良されました。江波電停や舟入南電停でも小規模な改良が13年度末に行われています。
資料によると今年度は宇品線の「県病院前」電停の小規模改良
来年度(2015年度)には「中電前」電停の大規模改良が行われるとのことです。

201301hondori-2.jpg
バリアフリー化された本通電停(2013年1月)

2008年に市役所前電停もバリアフリー化されました。利用者の多い1号線が通る鯉城通り上の電停の生まれ変わりが続きます。


さらに、電停で設置が進む「電車ロケーションシステム」(LED発車表示)に関しては、
今年度(2014年度)佐伯区役所前、鈴峯女子大前、草津、古江
来年度(2015年度)井口、草津南、高須、東高須
とのことで、今後も導入が進められるようです。

2014lrt-location.jpg
ロケーションシステムのイメージ推進協議会参考資料より)

市内線電停への導入は一段落して、昨年からは宮島線へ集中的に導入している感じですね。
まだ写真は撮ったことがないのですが、最近本当に宮島線のLED発車標が増えたように実感します。これは評価したいです。
設置されてない電停のほうが珍しいような状況になるのも近そうですね。


続いて超低床車両について。
ご存知の通り、12年度から導入が始まった新型3連接車両「1000形」を始め多くのLRVが運行についています。
導入計画は、既に分かっていた今年度の3編成(3本)に加え、
来年度(2015年度)も2編成の導入予定があることが分かりました。
広電前社長の越智氏は運賃の値上げによって15年で40編成もの超低床車両を導入するという目標を掲げられましたが、
失脚によって少し分からなくなりましたね。。
正直、越智前社長は駅前大橋線の地下乗り入れ構想"以外"の方針に関しては、評価できるものがあったと思っています。
(市内線・宮島線の運賃均衡化や信用乗車実験など。)
車両総数で言えば15年度末の時点で25%が超低床車両になるようですが、整備・点検中の車両も多く車両の低床化はまだまだと感じます。
積極的に更新していかれることを願いたいです。

201402hiroden1000-8.jpg


201311hiroden3-5.jpg





速達性・定時性確保に大きく寄与するような、信用乗車方式の導入及び運賃制度の見直し優先信号の拡大江波線接続ルート(平和大通り)などは
具体的な年次は定めず継続して検討するという表記にとどまりました。

2014lrt-schedule.jpg
推進協議会参考資料より)

具体的な時期が示されなかったのは残念でしたが、意外にも"速度制限の規制緩和の要請""諸車右折禁止の拡大に向けた検討""統廃合を含む電停改良"といったことまで協議会で議題に挙がっていることは、明るい材料かもしれません。
いずれも中長期的な目標ではありますが、どうか実現していただきたいです。


最後になりますが、これらの資料に対して広島市のホームページでパブリックコメント=意見の募集が受け付けられています。
【広島市】:平成26年度広島都市圏LRTプロジェクト生活交通改善事業計画(案)(利用環境改善促進等事業)に対する意見募集について
(この中の入力フォーム画面から)
期間は非常に短く、5月8日(木)~5月14日(水)までです。
今日を含めて3日しかありませんが、まだまだLRTとは呼べない広島の路面電車に対する改善案を伝えるには絶好の機会です。
特定の施策についてのみの意見でも問題無いと思います。
私も意見してみます。
興味のある方、資料をお読みになって是非ご意見を送ってみてください。



「広島ブログ」に参加しました!
クリックにて応援をよろしくお願いします(^_^)
広島ブログ

関連記事

広電のLRT化に向けて 制度の壁 【信用乗車方式】

2014年05月07日 22:45

4月は広島駅へ、南道路へ、段原・東雲へ、都市高速5号線予定地へ、横川駅へ…
普段はあまり行かないところまで動きまわったので、現地レポートが非常に多くなった月になりました(笑)
それらが一段落致しましたので、久々に提案系の記事を書いてみたいと思います。

過去のシリーズはこちら。
広電のLRT化に向けて 胡町・八丁堀電停統合の提案
広電のLRT化に向けて 『急ぐ時はバス』?
広電のLRT化に向けて サイド/センターリザベーションの提案


今回のテーマは「制度・法律」の問題です。
事業者である広島電鉄や行政を担う広島市の決断力の無さや決定の遅さはこれまでに何度か取り上げましたが、
路面電車の高度化(LRT化)を妨げるものに、国の法律や制度もあります。
その辺りを、いつもご覧になって下さっているヒロさんのブログ『広島市の都市問題について考える(ヒロさんのblog)』も大いに参考にさせていただきます。


信用乗車方式についてまとめてみたいと思います。
信用乗車方式とは乗車運賃の支払いを車掌の元ではなく乗客に任せることにより車両のすべての扉から乗り降りを可能にすることを言います。
広島電鉄を含む国内の多くの路面電車では乗車専用の中央側扉と降車専用の扉が別れており、電停での乗客の乗り降りに多くの時間を取られていますが、このロスの解消が期待できます。
広島電鉄でもかなり前からこの議論はあり、2012年2月には社会実験も行われています。
ICカード全扉乗り降り車両乗車記

201202hiroden-2.jpg



信用乗車方式の採用にあたって最大の課題になるのが、不正乗車に対する罰則です。
広く信用乗車が導入されている欧州では通常料金の10倍前後の高額な罰金が徴収されますが、現状日本国内においては
鉄道運輸規程及び軌道運輸規程により、
割増運賃(罰金に相当)は通常運賃の2倍以内、元々の通常運賃と合わせて3倍の運賃しか徴収できません。
日本の交通事業者というのは運賃収入による交通事業運営が大原則であり、3倍という低い罰則では抑止力に繋がらないとの思惑から全くと言っていいほど日本では普及していません。
国や自治体が国民の「交通権」を保証し積極的に交通事業者に対して"運営費"の補助を行う欧州とは考え方の異なる部分ですね。

この事以外にも、仮に法改正を行なったとして具体的に何倍が妥当なのか(具体的立証は困難)、定着している割増制度を変えることに広く理解を得られるのか、トラブル・訴訟になった場合に行政側や事業者が責任をもって説明できるのか。
といった大きな課題もあるようです。
国交省大臣官房参事官などを経験された西川健氏の論文が、非常に参考になりました。
運輸政策研究所】:信用乗車方式と割増運賃制度について(PDF 約407KB)

長年検討はされているものの、まとめ上げるのはかなり難しいようです。

しかしながら、市内線での表定速度が12~3kmの広電にとって乗降時の時間短縮は極めて重要です。
一つの提案として、西川氏の資料にはこのようなことが書いてありました。(以下一部転載)

 他方,特定の地域でのみ信用乗車方式の導入を促進するのであれば,信用乗車方式を導入した時の不正乗車を抑止するという観点からは,割増運賃制度という民事上の制裁に過度の期待をするのではなく,地方自治体
で定める条例による行政刑罰や地方自治体の長の定める規則による過料で対処できないか検討の余地があるのではないかと考えられる注12).

(ここまで)

"国が定める民事上の罰則にこだわらず、地方自治体で定める条例等によって反則金を徴収できないか"
という案です。
これは実は最初に紹介したヒロさんのブログでも提案されていました。
条例という形では内容によっては強制的に徴収できない場合もあるそうですが、現在の運輸規定の改正があまり期待できない状態の中、大いに将来性を感じます。賛成したいです。

ただこちらも簡単ではないでしょうね。
条例を定めなければならないとなれば当然ですが広島市がやる気にならなければ不可能です。
駅前大橋線一つとっても未だに決められていないですし、実現には今とは比べ物にならない程の明確なビジョンとそのための実行力が必要になります。
アストラム西風新都線の延伸意欲をこちらに持ってきていただきたい位です(笑)



今回は制度面について考えてみましたが、電停の統廃合やセンターリザベーション・サイドリザベーションと違って、
基本的にソフト面で対応できる話であり初期投資も少なく済むものです。
本気になって取り組めば、比較的短期間で実現できるはずです。
国内の高度路面電車=LRTでは広島は完全に富山の後塵を拝するようになってしまいましたが、
挽回のためにもどうか積極的に検討していただきたく思いますね。




「広島ブログ」に参加しました!
クリックにて応援をよろしくお願いします(^_^)
広島ブログ

関連記事

江波電停の改良と舟入通りの拡幅工事

2014年03月15日 21:35

先日、土橋電停のバリアフリー改良工事が完了したことをこのブログでも紹介しました。
土橋電停のリニューアル工事が完了!

今年度はこの土橋電停に加えて、江波線内でいくつか改良が行われています。
コメントでふないりさん、パセリさん、たくさん、sakachannchiさんに教えて頂いていました。ありがとうございます。

ようやく私も確認することができたので紹介します。

201403hiroden_eba-3.jpg

奥が江波車庫です。現段階ではプラットホームの嵩上げと柵の設置が行われていました。

江波電停は乗り場・降り場ともホームが低く、電車の乗り降りに労を費やしていました。
コメントのたくさんによれば、どちらとも歩道上に設けられた電停だったため認可等に時間がかかったとのこと。

今後は超低床車両の乗車機会も増えてきますので、バリアフリー対応が進んでなによりです。


反対側から。

201403hiroden_eba-5.jpg


201403hiroden_eba-6.jpg

設置された柵によって、電車を降りた乗客は手前の一箇所の出口のみを通ることになりました。


201403hiroden_eba-4.jpg


歩行者と路面電車のシームレスな利用を考えた時に、バス停のように広い歩道上に電車の乗り場があれば理想的なのですが、この江波電停の改良一つなかなかスムーズにできなかったことを考えると、まだまだ次世代の交通に生まれ変わるのは難しいと感じてしまいます。


ホームはコンクリートによって嵩上げされアスファルトも新しく舗装し直されていましたが、乗り場の屋根などその他の部分はほぼそのままでした。
降り場も、新しく屋根が設置されるような感じでは無かったので、これがひとまずの完成形ではないかと思います。(工期は3月31日まで)
4月になってまた確認してみます。



さて、江波電停でお客を乗せると電車は舟入通りに入っていきますが、
ここから舟入南町の電停がある「舟入南6丁目交差点」付近まで拡幅工事が進んでいます。

201403hiroden_eba-1.jpg


201403hiroden_eba-2.jpg


同じ場所を昨年8月に撮影したものがこちら。

201403hiroden_eba-7.jpg

車道が片側1車線から片側2車線になります。
こちらも今月中には供用開始になるでしょう。
ここはバスも通る道路ですから、改良でスムーズになりますね。



江波線内ではさらに、舟入南町電停もバリアフリー化する改良工事が行われています。
こちらは大変情けないことに、撮影を忘れて電車に乗って帰宅してしまいました。。
車内から見る限り、改良が行われているのは江波方面の下りのみ
上りは何も手は付けられていませんでした。

こちらも4月以降再び確認してみたいと思います。

地道な改良が続いていますね。



「広島ブログ」に参加しました!
クリックにて応援をよろしくお願いします(^_^)
広島ブログ

関連記事


最新記事